受付時間 10:00〜13:00/16:00〜19:00
(日・月・祝/木・土曜午後 休み)

アトピー性皮膚炎

HOME > 診療のご案内 > 保険診療 > アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎

日本皮膚科学会ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎は表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
 
日本皮膚科学会の診断基準は、1.かゆみ、2.特徴的な皮疹とその分布、3.慢性・反復性の経過で、3つすべて当てはまるものをいう。

原因

腸内・表皮・肺・口腔内等による細菌叢。体内に常在する細菌叢による、アトピーとの関連が解明されつつある(細菌叢とは様々な微生物群が存在環境下の要因(栄養など)により抑制しあうことでバランスが取れている状態)。体内に常在しているとアトピー体質になりやすい細菌、なりにくい細菌について示唆した研究がアメリカで行われていたが、はっきりした結論は出ていない。
 

遺伝的要因

遺伝子の解析により、マスト細胞、好酸球にIgE抗体を結合させるレセプターや、サイトカインのうちアレルギーの炎症に関与するものの遺伝子が集中している遺伝子座がアレルギーと関連していることが明らかになっている。
 

栄養要因

食用油の必須脂肪酸
必須脂肪酸の代謝経路とエイコサノイドの形成
現代では高リノール酸食が蔓延している。必須脂肪酸であるω-6脂肪酸であるリノール酸から体内でアラキドン酸が生成し、この物質から炎症・アレルギー反応と関連した強い生理活性物質であるω-6プロスタグランジン、n-6ロイコトリエン等のオータコイド類が生成される。高リノール酸食用油やそれを素材とする食品が、アレルギー反応と深く関わっていると指摘されている。アトピー性皮膚炎患者に対してω-6脂肪酸(主としてリノール酸)の含有量の低い食事を与えたところアトピーに改善効果が認められた。
 

環境要因

  • 一般的にアトピー性皮膚炎では下記の生活指導が有用である。
  • 入浴、シャワーにより皮膚を清潔に保つ。
  • ナイロンタオルを中止する。 
  • 室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境を作る。
  • 規則正しい生活を送る。
  • 刺激の少ない衣服を着用する。(物理的刺激の場合)
  • 換気に気を付ける。(揮発性有機化学物質などの化学的刺激の場合)
  • 爪は短く切り、掻破による皮膚障害を避ける。
  • 顔面の症状が高度な例では眼科医の診察を定期的に受ける。
  • 眼囲の皮疹を掻破、叩打することによって眼病変(網膜裂孔,網膜剥離)を生じうることに留意する。
  • 細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症を生じるリスク因子が高い場合もあり、皮膚をよい状態に保つよう留意する。

 

その他の説

アトピー性皮膚炎は血中IgE値増加によるアレルギーが一部の原因と定義されている。
表皮バリア破綻説がある。アトピー性皮膚炎では、皮膚の保湿に関わる成分であるセラミドの減少も原因である。

治療の基本

  1. 外用治療 →ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤
  2. 保湿
  3. 悪化因子の除去

の3本柱になります。
 

ステロイド外用剤

ステロイド外用剤を例えるなら、消火剤です。火事(いわゆる「炎症」「湿疹」)を消すための消火剤(ステロイド外用剤)です。原因は何であれ、被害を拡大させないためには火を早めに消すことが重要です。
アトピー性皮膚炎の炎症を充分に抑える外用薬は、ステロイド外用剤とタクロリムス外用剤のみと考えていいと思います。
いわゆる非ステロイド系抗炎症薬の外用剤は、ステロイド外用剤の一番弱いランクのものよりも効きません。全く効かないといっても差支えないほど炎症を抑える作用は期待できません。
 

注意

ステロイドは何となく怖いんだけど……
漠然と、ステロイド=怖いものという「ステロイド恐怖」を抱えている方が多くいます。このような人達に以下のの質問をすると

  • 「ステロイドの副作用は何?」→答えが出てこない
  • 「どんな副作用が怖いの?」→誤った副作用を心配している

ことが多くあります。
1980年頃にマスコミが盛んにステロイドバッシングを行いました。当時、多くの方が脱ステロイドを行い苦しみました。今は、その反省が活かされ、ステロイドの誤解は解かれつつあります。しかし、インターネットが発達した現在、また誤った情報が錯綜しています。
もちろん、薬ですから副作用があります。ですが、それはどの薬も同じことです。ステロイドだけ特別というわけではありません。1980年代と大きく異なることは、タクロリムス外用剤などのステロイド以外の治療法も保険適応となり、治療の幅が拡がっている点です。うまく、タクロリムス外用剤を併用することで、副作用の問題を軽減できます。